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神戸地方裁判所 昭和50年(ワ)29号 判決

原告 田中良一

右訴訟代理人弁護士 森智弘

被告 黒田滋郎

右訴訟代理人弁護士 佐藤幸司

同 松重君予

同 久保田寿治郎

主文

一  被告は原告に対し、金五万一、八〇〇円を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り、仮に執行できる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、別紙目録(二)記載の建物を収去して別紙目録(一)記載の土地を明渡し、かつ、金六万二、一六〇円及び昭和四九年一一月一〇日から明渡ずみまで一か月金八万円の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の父田中五郎は、昭和一一年にその所有する別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という。)を被告の父黒田常治郎に対し賃貸し、右常治郎は、本件土地上に別紙目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有して同土地を占有していたところ、田中五郎は昭和四九年三月一九日に、黒田常治郎は昭和四四年に、それぞれ死亡し、原告及び被告がそれぞれ同人らの遺産を相続により承継した。

2  本件土地の賃料は、昭和四九年四月当時一か月金一万〇三六〇円であったところ、被告は同月分から同年九月分までの賃料合計六万二、一六〇円を延滞した。

3  原告は被告に対し、昭和四九年一〇月一七日付そのころ到達の内容証明郵便による書面をもって右延滞賃料全額を同月二五日までに支払うべく催告をしたが、被告は右催告期間内に延滞賃料の支払をしなかったので、同年一一月九日付書面をもって本件土地の賃貸借契約(以下本件賃貸借契約という。)を解除する旨の意思表示をなし、右書面は同日被告に到達した。

4  本件土地の昭和四九年一一月一〇日以降の賃料は、一か月八万円を相当とする。

よって原告は被告に対し、本件賃貸借契約の終了に基づき、本件建物を収去して本件土地を明渡すことを求めるとともに、延滞賃料合計六万二、一六〇円及び昭和四九年一一月一〇日から明渡ずみまで一か月八万円の割合による賃料相当の損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因第1項は認める。ただし、本件賃貸借契約が当初成立したのは、昭和一〇年ころである。

2  同第2項中四月分の賃料の延滞は否認するが、その余は認める。

3  同第3項中催告期間の定めがあったことは否認するが、その余は認める。

4  同第4項は否認する。

三  抗弁

原告の本件賃貸借契約解除の意思表示は、以下の理由により無効である。

1  昭和四九年一〇月一七日付の催告書は、相当な催告期間を定めていないうえ、原告が本件土地を相続したことの通知、本件土地買取方の申込に重点をおいたもので、解除権行使の前提となるような厳しい催告と同視できず、よって催告の効力を有しないものであるから、これを前提とした解除の意思表示は無効である。

2  本件賃貸借契約は、田中五郎と黒田常治郎との間で締結された当初は、賃料持参払の約定であったが、黒田常治郎の死亡後被告が豊中市に居住し持参払が困難であったところから、被告と田中五郎との協議により同年一〇月分の賃料からは、神戸銀行(現在太陽神戸銀行)六甲支店の田中五郎名義普通預金口座に銀行振込するとの約定に変更され、同四五年一〇月分から毎月末翌月分支払との合意が右当事者間に成立した。被告が同四九年四月二六日同年五月分の賃料を前記口座へ振込んだところ、同口座が解約されていたため銀行から返金されてきた。右口座は田中五郎の死亡により解約されたのであるから、原告は被告に対し、新たな原告名義の預金口座を通知するなどして銀行振込の右約定に基づく賃料債務の履行を可能にする方法を講じなければならず、この点で本件賃料債務の履行は先ず「債権者の行為を要する」ものとなっているのに、原告はこれらの行為をせずに催告したから右催告は無効である。また、被告において右のとおり銀行振込ができなくなるまで一回の賃料不払もなかった誠実な履行態度、その後現在まで賃料支払の意思と能力があることを併せ考慮すれば、原告の前記催告には本件賃貸借契約解除の前提手続の効力を認めることは到底できない。よって前記催告に基づく本件解除の意思表示は無効である。

3  仮に第1、第2項の主張が認められないとしても、以下のとおり被告には、賃貸借における信頼関係を破壊するような背信行為はなく、原告の解除権は発生せず又は発生してもその行使は権利の濫用であり、いずれにしても解除の意思表示は無効である。

(一) 被告の父黒田常治郎及び被告は、本件賃貸借契約成立以来賃料を昭和四九年五月分が預金口座解約により返金されるまで一回の不払もなく支払ってきたし、同四五年一〇月分からは毎月末翌月分払となったが、同月分から同四九年四月分まで四三か月分の支払のうちわずかに三回期限に遅れたことがあるだけであり、原告の就職先を被告が斡旋する等極めて親しい関係を維持していた。

(二) 被告は、昭和四八年四月六日勤務先の駐在員として台北へ赴任し、その後同年一〇月長期ビザ申請のため、同四九年九月末から一〇月にかけて業務連絡のため、それぞれ二週間ほど帰国したのを除いて、同五〇年八月二四日帰国するまで台北に滞在していた。また被告の妻黒田和可(以下和可という。)も、被告が同四九年一〇月八日台北へ帰任する際台北へ同行し、その後同五〇年四月一八日一時帰国しただけで、同年八月二四日に帰国するまで被告とともに台北に滞在していた。したがって昭和四九年五月分の賃料が口座解約により返金された際も、被告は台北滞在中であり、和可から何の連絡もなかったのでその間の事情を知らず、同年九月末一時帰国した際、和可から右事情を聞き、また翌一〇月初本件建物に居住する黒田隆一(以下隆一という。)から田中五郎の死亡の事実と原告からの本件土地買取方の申込の話を聞いたが、すぐに台北へ帰任しなければならなかったので、やむを得ず本件土地に関する問題については隆一にすべてを託して、同月八日台北へ帰任した。

このように被告は、とりあえずできる限りの措置はとったが、台北滞在のため思うに任せず、口座解約後原告から何の連絡もないため銀行振込ができず、田中五郎の相続人も不明であったなどの事情から、地主からの連絡をまつうちに賃料支払が滞った。しかし被告は不払の意図はなく、いつでも支払えるよう準備していた。

(三) 原告は、何の連絡もなく突然同月一七日付書面で被告に対し相続の通知、延滞賃料の催告及び本件土地買取方の申込をなしたが、被告夫婦が台北滞在中のため、被告の長女黒田多美(以下多美という。)がこれを受領した。多美は、右催告書の内容が緊急を要するものとは思わず、また原告が一方的に賃料を値上げしその分を請求してきたものと思い込み、賃料の値上げについては隆一に任していると被告から聞いていたので、その話がつくまで右値上げ分を支払う必要はないと考え、右催告書については被告にも隆一にも知らせなかった。ところが同年一一月九日付書面で原告から本件賃貸借契約解除の意思表示がなされたので、多美は非常に驚き隆一に相談し、隆一は、同月一一日以降被告に代わり再三原告宅に出向いたり電話をかけたりしたが、原告不在のため同月二八日延滞賃料合計六万二、一六〇円を銀行振出の小切手で支払うべく準備をして原告の勤務先まで行き、電話で原告と同日夜原告宅で話し合うことを約したが、原告の妻から電話で後日改めて日を指定するという連絡があったのみで、原告に会えないまま本件訴訟に至った。

(四) 被告としても、留守宅と連絡を密にして賃料支払方法に関して照会その他調査するか供託すべきであったが、原告としても、被告に対して相続の通知、原告名義の預金口座の通知等の連絡をすべきであった。そして原告は、昭和四九年八月ころ、被告夫婦が台湾滞在中であることを知っていたのである。

以上の諸点からすれば、前述のような期間も定めず、相続の通知、本件土地買取方の申込と共にするようなあいまいな催告の到達後わずか二〇日間の不払をもって四〇年近くにわたる本件賃貸借契約の信頼関係を破壊する著しい背信行為があったとはいえず、よって本件解除の意思表示は無効である。

四  抗弁に対する原告の認否

1  抗弁第1項は否認する。

2  同第2項中本件賃貸借契約が当初賃料は持参払の約定であったこと、昭和四四年一〇月分以降の賃料が銀行振込によって支払われてきたこと及び同四五年一〇月分から毎月末翌月分払になったことは認めるが、その余は否認する。銀行振込は便宜上とられたもので、賃料の支払方法はあくまで持参払である。

3  抗弁第3項は否認する。

(一) 原告は、田中五郎死亡(昭和四九年三月一九日)後直ちに被告に対し郵便葉書で右事実を通知し、隆一に対しても原告が相続したことを通知し、被告に連絡することを依頼した。

(二) 被告は、賃料支払の履行期を再三徒過し、昭和四九年三月二七日の銀行振込分も一月遅れの同年三月分であった。仮に被告が同年四月分の銀行振込ができなかったとしても本来の持参払の方法によるべきであったし、送金する等他の方法による支払が容易であったにもかかわらずその後は全く賃料を故意に支払わず、放置したままであった。また仮に被告が台湾に出張したことがあったとしても、被告は、昭和四九年九月帰国し、しかも原告宅に近い隆一方へ赴いたにもかかわらず延滞賃料を支払おうとしなかった。以上の被告の行為は、賃貸借における信頼関係を破壊する背信行為である。

第三証拠《省略》

理由

一  本件賃貸借契約の成立が昭和一〇年であるか同一一年であるかはさておき、請求原因第1項については、当事者間に争いがない。

二  被告が昭和四九年四月分の賃料を延滞したかどうか、同年一〇月一七日付書面に相当な催告期間が定めてあったか否かはさておき、被告が少なくとも同年五月分以降の一か月金一万〇、三六〇円の賃料の支払を滞っていたところ、原告が被告に対し、同日付内容証明による書面で同年四月分から同九月分の延滞賃料合計六万二、一六〇円の支払の催告をなし、被告が右催告額の金員を支払わなかったこと及び原告が被告に対し、右事実を理由として同年一一月九日付同日到達の書面で本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなしたことについては、当事者間に争いがない。

三  抗弁第1項について判断するに、《証拠省略》によれば、原告主張の本件催告においては、一〇月二五日までと催告期間を定められている事実が認められる。ただ右証拠によれば、右催告書は平穏な表現がとられ、同時に原告が相続した旨の通知、本件土地買取方の意向の有無の打診や面談の希望が併記されている一方、催告に応じない場合の解除の予告の記載はなくその全文を通読しても、契約解除の手続要件としての催告の効力を否定するに足る表現はない事実が認められ、更に右催告に解除の予告を要するものではないことは明らかである。また《証拠省略》によれば、右催告書は同月一九日に被告に到達している事実が認められ、同月二五日まで六日間の期間があるのだから、相当な催告期間というべきである。而して被告の右抗弁は採用することができない。

四  次に抗弁第2、3項について判断するに、

1  本件賃貸借契約当初賃料は持参払の約定であったこと、昭和四四年一〇月分以降の賃料が被告主張のとおり銀行振込によって支払われてきたこと及び同四五年一〇月分から毎月末翌月分払になったことについては、当事者間に争いがない。

2  《証拠省略》によれば、被告が昭和四二年豊中市に転居してから田中五郎が毎年行われた賃料値上げの交渉のため被告宅を訪れた際などに、賃料を取立てたことが何回かあったが、田中五郎が取立てなかったため数か月分滞ったときは被告はこれを持参支払っていた事実及び田中五郎が足が不自由なためと被告が豊中市から田中五郎宅へ賃料を持参するのに時間がかかるため、田中五郎と被告とが前記のとおりの銀行振込の方法により支払うことを合意した事実が認められる。

3  本件賃貸借が遅くとも昭和一一年ころ始まり、約四〇年近くに及ぶものであることについては、当事者間に争いがなく、《証拠省略》を総合すれば、黒田常治郎ないし被告が昭和四二年一一月分から同四九年四月分までの賃料を全額支払ってきた事実、そのうち同四五年一〇月分以降については、被告が毎月末翌月分支払の期限に遅れたのは六回で、それも一回は一か月間であるが他はそれ以下の遅延にすぎなかった事実及び和可が同四九年四月二六日同年五月分の賃料を従前どおり銀行に振込んだが、田中五郎名義の預金口座解約のため返金された事実が認められる。《証拠判断省略》

4  《証拠省略》を総合すれば、被告は、本件土地上の建物を親戚の隆一に賃貸し、同人がこれに居住していた事実、被告は後記のとおり昭和四九年一〇月日本を出発するに際し、隆一に対し本件土地について地主との交渉を委ねた事実、被告は、昭和四八年四月六日勤務先の台北駐在員として支店開設のため台北へ赴任し、その後同年一〇月長期ビザ申請のため、同四九年九月末業務連絡のため、それぞれ二週間ほど帰国したのを除いて同五〇年八月二四日に帰国するまで台北に滞在し、和可も被告が同四九年一〇月八日台北へ帰任する際、被告の身の回りを世話するため台北へ同行し、その後同五〇年四月一八日一時帰国しただけで、同年八月二四日帰国するまで被告とともに台北に滞在し、そのため被告は昭和四九年五月分の賃料が返金された事実を同年九月末一時帰国するまで知らなかった事実、同四九年一〇月一七日付書面による本件催告がなされた時には被告の留守宅には多美と高校生の長男しかおらず、右催告書を受領した多美は、若年でかつ職業柄社会的経験に乏しかったうえに、かねて被告から田中五郎が求めている本件賃料の増額問題は隆一に任せてある旨告げられていたので、前記催告をもって一方的に増額した賃料額による不当な催告であると誤解し、更に先に認定したとおり右催告が平穏な文面であったこともあってこれを放置してよいものと考え、被告及び隆一に知らせなかった事実、並びに、同四九年一一月九日付書面による本件賃貸借契約解除の意思表示を受領した多美が隆一に相談したところ、隆一は、原告と面談するため原告宅に何回か行ったが原告不在で会えず、一一月二八日催告された延滞賃料合計六万二、一六〇円を支払うべく銀行振出の小切手を用意して原告の勤務先に赴き面会を求めたが、結局原告から拒絶され会えなかった事実が認められる。

5  《証拠省略》を総合すれば、田中五郎の葬式の際隆一が参列した事実、原告が同年五月ころ八幡商事を通じて隆一に本件土地を買取るかあるいは本件建物を売却しないかと申入れ、そのしばらく後原告の妻からも再度同様の申入れがあり、隆一はそのころ、田中五郎死亡の事実と右申入れのあったことを当時日本にいた和可に伝えたが、和可は、これを知ってからも原告宅に同年五月分の延滞賃料を持参することも、手紙、電話などによって連絡することもしなかった事実、並びに、被告が同年九月末に業務連絡のため一時帰国した際、和可から同年五月分の賃料が返金されたことや、同月分以降の賃料を延滞していることや、田中五郎の死亡及び前記のとおりの本件土地買取方の申入の話を聞いて知り、また原告宅の近くにある隆一が居住する本件建物に立寄った際、隆一からも同様の話を聞いたにもかかわらず、夜遅くなっていたためすぐ近くの原告宅を訪れることも連絡することもなく、隆一にその後の地主との交渉について一切を委ねることはしたが、延滞賃料合計額を渡して支払を依頼するなど賃料支払の具体的指示を与えることなく、当時二六歳で教師をしていた多美にも、本件土地の延滞賃料の支払については何ら指示を与えず、そのまま和可を同行して台北へ帰任した事実、ところで、昭和四九年五月分以降の賃料延滞は、被告及び和可において支払の意思及び能力がなかったためではなく、田中五郎の相続財産として本件土地のほか相当の不動産があり、相続人も原告一人ではなかったため、被告及び和可において本件土地を相続する者が果たして誰であるかも、また、新たな振込先の銀行口座も判明しなかった(前記のとおりの本件土地売却申出の際に、売主、即ち相続による取得者が原告であると明示されたことの確証はないし、原告本人尋問の結果中、被告及び隆一に原告の本件土地相続の事実を知らせた旨の部分は、《証拠省略》に照らしたやすく信用できない。)ので、改めて連絡あるまで支払を停止していたにすぎず、本件解除の前後を通じ一貫して支払の意思及び能力があった事実が認められる。

以上の事実関係のもとでは、被告が昭和四九年五月分以降の賃料を延滞したのは、被告に賃料支払の意思及び能力がなかったからではなく、原告はじめ田中五郎の相続人らにより銀行口座が解約されたためと、本件土地の相続人が被告には判明せず、賃料の二重払の危険にさらされるに至ったことが原因と解される。そして、銀行に振込んだ賃料が返却され田中五郎死亡の事実が被告又は和可に判明した後に、同人らにおいて田中五郎の相続人を探索し新たな振込先の銀行口座の指定を受けるべく交渉するなどの措置をとらなかったことは、信義則上好ましくないが著しく反するともいえず、一方原告においても、自己が賃料債権者であるか、少なくとも賃料債権の準占有者にあたることを証明して被告の二重払の危険を解消させるべきであり、更に、新たな振込先の銀行口座を指定すべきであることを考慮すれば、前記の被告らの不払及び不作為は、四〇年近くにわたる本件賃貸借の継続を困難ならしめる程当事者間の信頼関係を破壊するものではないと解される。

次に被告が催告期間を徒過する結果となったことは、信義則に反するけれども、社会的経験の十分ではない留守番の多美が本件催告を無視したのは、前記のとおりの誤解を生む素地があったことと催告の文言の平穏性によるものであることなどを考慮すると、酌量すべき事情があると解され、解除の意思表示後直ちに隆一が賃料延滞の状態の解消に努力し、被告もまた賃料支払の意思及び能力を継続して有していることも背信性の判断において被告に有利に考慮すべきである。

これらの事情並びに本件審理に現われた諸般の事情を総合して判断すると、被告の履行遅滞及び催告期間の徒過は、信義則に照らし本件賃貸借の継続を困難ならしめる程著しく信頼関係を破壊したものということができないものと解するのを相当とし、したがって、原告の本件賃貸借契約解除は無効であって、これに基づく原告の建物収去及び土地明渡並びに遅延損害金の各請求は失当として棄却すべきである。

五  原告の延滞賃料の請求について判断するに、そのうち昭和四九年五月分から九月分までの賃料計五万一、八〇〇円が未払であることは当事者間に争いがないが、同年四月分の賃料が支払済であることは、前段3に認定のとおりであるから、右未払分の支払を求める部分は正当として認容すべきであるが、その余は失当として棄却すべきである。

六  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、延滞賃料合計五万一、八〇〇円の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 野田殷稔)

〈以下省略〉

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